

みなさんこんにちは。リノベーションアドバイザーの芝です。
理想の住まいをイメージしたとき、まず思い浮かぶのは「光が抜ける広いリビング」や「家族がつながる開放的なキッチン」ではないでしょうか。
ですが、いざプランを立て始めると、目の前に立ちはだかるのが「抜けない壁」や「動かせない柱」という現実です。これ、リノベの現場では“あるある”なのですが、せっかくの夢に水を差されたようで、少しがっかりしてしまいますよね。
でも、諦めるのはまだ早いかもしれません。
実は、家の安全を守る「耐力壁」も、構造を熟知したプロの目で見れば、スマートに移動させたり、デザインの一部として活かしたりする方法がいくつもあるんです。
今回は、構造の制約を「妥協」で終わらせないために。私たちが現場で実践している、耐力壁との上手な付き合い方をご紹介します。
目次
間取り変更の鍵を握る「抜けない壁」とリノベーションの可能性
実際に間取り変更を行ったお宅。壁を取り、床レベルや仕上げを変えることで空間を区切りつつも広々としたリビングに
戸建てに限らず、リノベーション・リフォームされるお客様で非常に多いご要望が「間取り変更」。
何年も同じ家に暮らしていると同居家族の人数や状況も変わってきて、それにつれて家の使い方が変わってきます。
お子さんが独り立ちして個室は要らなくなったし、ここの壁を抜いてリビングを広くしたい!
なんて夢も出てきますよね。
しかし、家の中にはどうしても取れない壁や柱があります。その一つが耐力壁です。
戸建ての耐震リノベーション・リフォームで行う「耐震補強工事」とは?
耐力壁とは?地震や台風に耐える「住まいの要」の役割
左が両筋交い壁、右が構造用合板壁。構造用合板壁の中は普通の木軸が入っています。
耐力壁とは、読んで字のごとく「力に耐える壁」。主に地震や台風などによってかかる力に抵抗しています。
耐力壁の種類はいくつかありますが、よく使われる物に「筋交い入り壁」と「構造用合板壁」の2種類があります。
筋交い(すじかい)と構造用合板|種類による強度の違い
筋交いは間柱の間に斜めの材が入っているもので、✕に入っているものもあれば片方だけのものもあり、✕で入っているものの方が強度が高くなります。
対して、構造用合板は間柱に板状の構造材を打ち付けたもので、合板の種類の他、釘の性能や打ち方でも強度が変わってきます。
耐力壁がどこにどれくらい入るかは、家の形や造り、大きさによって変わっていきます。
量が充分でも、左右で設置位置が片寄ってしまうと力の分散がうまく行かず、逆に崩れやすくなってしまうため、耐力壁を置く位置に関しても計算が必要です。
耐震バランスの重要性。配置の「偏り」がリスクを生む理由
片方の抑える力が強すぎると、そこを中心に家に回転力が発生してしまい危険です。
耐力壁の設計で大切なのは、実は数だけではありません。一番のポイントは「配置のバランス」なんです。
例えば、南側に大きな窓を作るために、北側ばかりに耐力壁を固めてしまうとどうなるでしょうか。地震が来たとき、壁の少ない南側だけが大きく振り回されて、建物全体に「ねじれ」の力が加わってしまいます。
片方の抑える力が強すぎると、そこを中心に家に回転力が発生してしまい危険です。壁の量は足りていても、このバランスが崩れると、建物は本来の強さを発揮できなくなってしまいます。
私たちが間取り変更を考えるときは、ただ壁を抜く・足すだけでなく、この「ねじれの計算」をしっかり行い、家全体がバランスよく踏ん張れるようにシミュレーションしています。
「ここの壁を抜いて1部屋にしたいのに!;;」という願いを叶えつつ、目に見えない建物のバランスをどう守り抜くか。 そこが、私たちアドバイザーの腕の見せ所でもあるんです。
耐力壁・筋交いは「移動・撤去」できる?理想の間取りを叶える2つの手法
かといって、せっかくのリノベーション・リフォームを諦めたくは無いですよね。ここからは耐力壁とうまく折り合いをつけてリノベーション・リフォームをする方法をご紹介します!
【手法1】筋交いを「見せる」デザインで開放感を演出する
まず一つ目は筋交い現しという方法。
筋交いが残ってしまうので通り抜けは出来ませんが、通気と見通しの良さが確保されます。また、この方法は元が筋交い入り壁だった場合、上に貼られている石膏ボードを外して筋交いに化粧を施すだけなので、耐力壁の再計算や余分な工事が不要で、比較的簡単な工事です。
筋交い現しのビフォーアフター。引戸を撤去し、筋交いを覆っていたボードを取っただけでもお部屋の印象はグッと変わります
【手法2】構造計算に基づき、耐力壁を最適な位置へ「移動」させる
こちらは今ある耐力壁を別の場所に移すという方法。
筋交い現しと違い、完全に壁が抜けるので通り抜けも可能で、より理想の形に近付けることが出来ます。
ただ、移動の際にはいくつか注意点があります。
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注意点1:壊す耐力壁と新設する耐力壁の強度を同じにする
先述した通り、耐力壁は作り方によって強度が変わってきます。耐力壁の全体量は決まっているため、弱めたり強めたりせず、抜いた分の耐力壁と同程度の強度を保つ必要があります。
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注意点2:偏りが生まれていないか確認する
こちらも先述した通りです。一ヶ所に耐力壁が集まりすぎてしまうと偏りの原因となるため、あまり離れた所への移動は出来ません。極力近い所への移動が必要です。
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注意点3:下に基礎があるか確認する
耐力壁は、力に抵抗するために基礎に設置されている事が必須です。
基礎のある場所はご自宅の竣工図面か、床下点検口から覗ける場合は目視で確認します。
どちらも無い時は解体してみての確認になりますが、もし移動させたい場所に基礎がない場合は位置の再検討か基礎を追加する必要があります。
基礎の追加となると、周辺の床を壊す必要があるのでなかなか大きな工事になってしまいます。耐力壁の下は、図のように基礎がある必要があります。既存の内壁に耐力壁を移す場合でも、基礎がないことがあるので慎重に検討する必要があります。
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注意点4:耐震等級の維持と再計算
耐震等級というのは、地震に対する家の倒壊、損傷しにくさを表す等級で、当然耐力壁も等級を決める要素の一つになります。各等級の性能は以下の通りです。
- 【耐震等級1】
- 極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力に対して倒壊、崩壊等しない程度(建築基準法レベル)
- 【耐震等級2】
- 極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力の1.25倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度
- 【耐震等級3】
- 極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力の1.5倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度
もし現在の家が耐震等級2以上で、リノベーション・リフォーム後も同じ等級を維持したい場合は、構造に関する計算を再度行う必要があり、そのための費用と時間も追加でかかって来るため注意が必要です。
間取り変更リフォーム・リノベ、壊せる壁と壊せない壁どう違う?《戸建て・マンション》
まとめ。耐力壁をなくすことはできないけど動かすことは出来るかも!リノベーション・リフォーム計画とお家次第
いかがでしたでしょうか?
リノベーション・リフォームには邪魔な耐力壁も、地震大国日本の住宅には欠かせない存在なのです。
それでも、理想の住まい作りをまるっきり諦めてしまう必要はありません。
ご自宅の耐力壁が動かせるのかどうか、なかなか判断が難しいところではありますが、是非一度夢工房までご相談くださいませ!
そして、次回は実際にリノベーション・リフォームで耐力壁の移動を行った現場のご紹介をしたいと思います。
戸建てリノベーション・リフォームの「耐力壁」は移動できる?②実際の補強工事と劇的ビフォーアフター
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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